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正しい情報提供や匿名相談できる場を 性感染症に特化したアプリ立ち上げ 千葉県知事賞(ちば起業家優秀賞)・千葉日報賞に藤澤さん 【CHIBAビジコン2022】

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  2023/2/28
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「性感染症に特化したアプリ」を提案したヘルスコネクト(東京都渋谷区)が、千葉発の起業を応援する「ちば起業家ビジネスプラン・コンペティション2022」(CHIBAビジコン・県主催)で、新規性・創造性のあるビジネスプランに贈られる「千葉県知事賞(ちば起業家優秀賞)」と、ITを活用したプランに贈られる「千葉日報賞」を受賞。代表取締役の藤澤美香さん自らが性感染症当事者であり、その苦悩の末、悩みを共有・相談できるプラットフォームを作ろうとアプリ制作チームを立ち上げました。
今まで閉鎖的だった分野へ風穴を開け、「社会的意義」として取り組む事業についてお話を伺いました。

誰にも言えない性感染症の悩みに答えてくれる

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インタビューを受ける藤澤さん(左)と、エンジニアとしてアプリの設計を担う折田光生さん
―CHIBAビジコンに応募したきっかけを教えてください。

藤澤:会社は以前勤務していた病院が近かったので渋谷区ですが、千葉県生まれの印西市育ちということで応募しました。

―ファイナリストに選ばれて、周りの反響はいかがでしたか?

藤澤:ビジコンの舞台に立ったとき、あんな多人数の前で「私は性感染症保有者です」と発表するのは正直抵抗はありました。

でも、発信してみたら「共感しました」とか「課題意識を感じました」といったポジティブな声かけをしてくれる方が意外にも多かったのが印象的でした。
誹謗中傷はほぼなくて、世の中は思っているより優しい人が多いな(笑)と思いました。
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性感染症に特化したアプリ「say」の画面
―今回受賞となった「性感染症に特化したアプリ」とはどのような内容ですか?

藤澤:現在制作中のアプリ「say」は、性感染症の悩みを持った人のスタートからゴールまで伴走するプラットフォームです。
アプリの主なコンテンツは、

① 性の悩みを匿名で投稿し経験を共有できる
② 性感染症に特化した病院を紹介。オンライン診療の予約が可能
③ 医師・看護師・臨床心理士にオンラインで相談。セカンドオピニオンが可能
④ 最新の性感染症の医療情報コラムを掲載

の4本で形成しています。

性感染症者が実際に必要な内容や情報を網羅し、人には言えない悩みを抱えている人が、匿名で相談できる場を提供することを目指しています。

―アプリを開発しようと思ったきっかけを教えてください。

藤澤:2020年にコロナが日本で流行しはじめたとき、私は昭和大学病院でコロナ病棟に勤務していました。まだコロナの実態が不透明で治療が確立されていない初期の頃で、過酷な状況で治療にあたっていたときに心身ともに疲弊し性器ヘルペスを発症しました。

当時付き合っていた彼に打ち明けることが不安になり、他の人はどうなのかネットで調べてみたところ、実際に罹患した人の体験談などはほぼなかったんです。

ヘルペス発症! 同じ悩みを持つ人と共有したい

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「CHIBAビジコン2022」でプレゼンする藤澤美香さん(右)=2023年1月、幕張メッセ
―そのときはお付き合いしていた彼には打ち明けたんですか?

藤澤:はい。重い反応が返ってくると思ったら「そうなんだ」と意外にあっさり(笑)。それで気持ちが楽になりました。そこで、自分の状況を日記のようにSNSで発信したところDMへ反応がたくさん届き、一人で悩んでいる人が多いことを知りました。

―反応の内容はどういったものでしたか?

藤澤:「ヘルペスになった、どうしたらいいの?」という悩みはもちろんですが、「もう恋愛できないかもしれない」「妊娠できないの?」という今後の不安、「もう死にたい」と精神的に追い詰められている人、さらには「これもしかしてヘルペスですか?」と切羽詰まって自分の陰部の画像を送ってくる人など、驚くほどさまざまな悩みが送られてきました。

―思いのほか切実な悩みが多かったんですね。

藤澤:そうなんです、インスタでは延べ400件以上のDMが届きました。まさかこんなに、誰かに相談したかったけどできなかったと不安になっている人がいるとは…。

そこでいろいろ調べていくうちにヘルペスに関するあるオープンチャットにたどり着きました。そこには、「医者にかからなくても、この薬ならここで買えますよ」といって薬を個人輸入して自己判断で服用する人など、間違った情報が飛び交っているのを見てゾッとしました。

社会問題となりつつある性感染症

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熊谷知事から表彰を受ける藤澤さん
―誤情報を信じて症状を悪化させることもありますよね。そもそもヘルペスはきちんと治療すれば治る病気ですか。

藤澤:ヘルペスは10人に1人は保有者という身近なウイルスで、無症状というケースも多いです。神経に住み着いてしまうウイルスなので完治させることはできませんが、病院で適切な治療を受け、正しく薬を服用すれば心配ありません。

ただ、性感染症の専門医が全国的に少なかったり、婦人科医でも専門でなければ性感染症の最新の治療知識がない場合もあります。
患者側も、診てもらうのが恥ずかしいとか、どんな検査をされるのか不安に思い、病院にたどり着くまでのハードルが高いんです。

そこで、ユーザーの悩みや体験を投稿でき、症状検索できたり、専門の病院を掲載したり、病院に行く前に看護師や臨床心理士に気軽に相談でき、心のケアもしてもらえるようなツールを作ったら、一人で悩んでいる人を救えるのではないかと考え、アプリの開発を立ち上げました。

―現在アプリは準備中とのことですが、今もSNSでは相談が多く届きますか?

藤澤:はい、意外なことに男性からの相談も増えています。
「彼女に感染症をカミングアウトされたけどどうしたらいい?」とか、感染症以外にも包茎やEDの悩みとかも多いですね。

ある中学生男子からは、「修学旅行でお風呂に入ったときに、みんなに小さいとか包茎だとからかわれ、女の子の前でも言われて嫌な思いをした」という相談もありました。これはいじめにもつながりかねない問題。親にも言えなくて悩んでいる子どもも少なくありません。

―悩んでいるのは女性だけではないんですね。

藤澤:そうですね。もっと言うと海外に住んでいる日本人の悩みも深刻です。
以前、オンラインで海外在住者も参加した相談会を開いたんです。「語学留学先で現地の男の子と付き合ってヘルペスにかかってしまった。保険に入っておらず受診ができない」とか「市販薬が売っているけど、用法容量が日本人の体質に合っているのかわからない」など、泣きながら話す子もいて…。

当社のアプリなら、日本人の医者ともオンラインでつなげることもできるし、服用して問題ない薬なのか判断してもらえるので、海外にいる人でも救ってあげられるのではないかと思いました。これは専門医が少ない地方在住者でも同じことが言えます。
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受賞者らで記念撮影
―お話を聞いていると性感染症は社会問題にもつながっていると感じます。

藤澤:最近では、梅毒やクラミジアなどの性感染症者も増えているとニュースになっています。SNSとかマッチングアプリなどの普及でいろいろな人と簡単に会え、性の知識がないまま安易に身体の関係を持ってしてしまうことが要因のひとつです。

深刻な社会問題にもかかわらず、相談するところも、適切な情報を提供するところもないのが現状です。

―信頼性のある「正しい情報」を伝えることは重要ですね。

藤澤:アプリを制作する上で、間違った情報を発信しないという課題意識を持つことが大事な観点です。

他のメディカルサイトでも性感染症のことを解説していますが、一過性の鎮痛薬的な存在でしかありません。
性に関する根本的な考え方やリテラシーをあげていかないとだめだと思っています。

教育現場で使えるアプリを目指す

―根本的な課題を解決しないといけないということですね。それに向けて今後の取り組みを教えてください。

藤澤:当社のアプリを教育機関にも発信していきたいと思っています。
日本の性教育は閉鎖的でなかなか踏み込んでいけない。使用できない言葉もあります。
でも、そこをクリアしていかないと伝えられないことがあります。
教師も保護者の方も、子どもたちにどう伝えたらいいかと苦慮しています。

内部からは難しいのであれば、外部から踏み込んでいくことは可能なのではないかと思っっています。
「当社のアプリなら安全だからダウンロードしてみてください!」と提案できるアプリケーションにしていくのが目標です。

―青少年から性の意識改革をしていく必要性があるということですね。

藤澤:現在の社会課題としてそれは急務だと思います。

今は性感染症に特化したアプリですが、最終的には、ジェンダーレスも含め、性の悩み全般を網羅したツールにしていくことを考えています。
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受賞後に清々しい笑顔を見せる藤澤さん
―では起業家として今後の展望は?

藤澤:性感染症患者は入院者が少なく、大きな病院でも対象者が少ないので、治験会社や製薬会社は患者が多い病の方に力を注いでしまう。データが少ないというのが、日本の性感染症治療が遅れている理由のひとつです。

今後は、当社のデータベースを基にして、製薬会社や治験会社、コンドームの会社、フェムテック市場などを巻き込んで治療や製品開発を進めていきたいですね。

―最後に性感染症などに悩む人々にメッセージを。

藤澤:自分が悪いんじゃないかというネガティブな思いにとらわれて、恋愛や出産など諦めないでほしい! 恋愛も出産も可能だよ! 大丈夫だよ! と伝えたいですね。

―ありがとうございました。千葉発のイノベーションに今後も期待しています。
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HealthConnectの制作チーム
●プロフィール
代表取締役/看護師 藤澤美香
千葉県生まれ 印西市育ち
順天堂大学卒業
日本赤十字社医療センター 救命救急4年
昭和大学病院 HCU4年・循環器病棟・コロナICU・発熱外来を経て退社。
2022年8月 HealthConnect株式会社を設立し、看護師、エンジニアなど平均年齢27歳の4人で制作チームを立ち上げた。
「say」は現在ランディングページを作成中。本年度中の運用を目指す。
https://healthconnect-tellme.web.app/
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千葉日報社ちばとぴ!編集部です。 千葉のポジティブニュースを発信するコーナー「ちばとぴ!ニュース」を運営しています。 「ちばとぴ!ニ...
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