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3600形ターボくん&こあら号で行く! 山万ユーカリが丘線車両基地見学ツアー

  2022/5/29
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以下は 2 年前に書かれた内容です

京成トラベルサービスでは、京成電鉄、山万の後援で、2022年5月21・28日(土曜日)に「3600形ターボくん&こあら号で行く! 山万ユーカリが丘線車両基地見学ツアー」を開催した。2022年は京成電鉄3600形のデビュー、山万ユーカリが丘線の開業がともに40周年を迎えるという、“アラフォーツアー”となった。

京成電鉄3600形の異端車「ターボくん」とは

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人気者の3600形ターボくんで旅立ち。
2022年5月21日(土曜日)、「3600形ターボくん&こあら号で行く! 山万ユーカリが丘線車両基地見学ツアー」は京成電鉄本線の京成上野から始まる。発車時刻は過去の京成ツアーと同じ9時07分。毎年1月に運転される臨時〈シティライナー91号(成田山開運号)〉京成成田行きのダイヤを極力活用することで、途中駅での追い抜きが容易にでき、スピーディーな移動ができる。

3600形は1982年6月に登場したオールステンレス車体の第1世代車両で、先頭車はモーターなしの付随車、中間車はモーターつきの電動車にそろえた6両車だった。運転台はワンハンドルマスコン、制御装置は界磁チョッパ制御(当時の省エネ車両)で、初代AE形以来の採用となった。以降、ワンハンドルマスコンは京成電鉄の標準装備となる。1989年まで9編成54両が投入された。

1997年6月から1999年9月にかけて3編成を分解し、中間車12両は6編成の8両化に伴う増結車として転用された。余った先頭車6両のうち、4両はVVVFインバータ制御化(現在の省エネ車両)されることになり電装。このほか、車両番号の下ひとケタが「8」の車両にパンタグラフを取りつけ、さらに2両は簡易的ながら中間車化されるなどの改造工事が行なわれた。

1999年2月、改造工事が完成し、オール電動車の4両車に組み直した。当時の在来線用VVVFインバータ制御の車両で、すべて電動車という異例の車両になった。

残る2両は1999年8月に簡易的な中間車化改造が完成し、付随車のまま3・4両目に増結され、6両車化。それでも当時の在来線用VVVFインバータ制御車両では珍しく、編成中の電動車の数が多い車両であった。

2017年2月17日(金曜日)に付随車が廃車され、4両車に戻る。京成電鉄によると、「『ターボくん』の名前の由来を考えると、この頃からではないかと予想されます」の由(よし)。ただ、この愛称自体がレールファンや京成電鉄の社員から徐々に浸透したものであり、正確にいつからというのはわからないそうだ。無論、京成電鉄が公式に設定した名称ではない。

2020年代に入ると、「ターボくん」の名が大きく広まったようである。また、先頭車が電動車でないと乗り入れ不可の京浜急行電鉄にも足を踏み入れ、総合車両製作所で新製された2代目3100形の牽引回送が行なわれたという。

現在、3600形はリバイバルカラーの6両車、ターボくんの計10両が在籍。各駅停車の運用に専念されており、自社線と芝山鉄道で活躍が続く。

京成高砂―ユーカリが丘間はノンストップ運転

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車内を眺めると、タイムスリップしたような感覚。
ターボくんは〈京成パンダ号〉のヘッドマークを掲げ、定刻通り9時07分に発車。車内はサバースアイボリーとホワイトの化粧板を組み合わせており、東武鉄道の昭和車両を彷彿させる。天井には分散式冷房機と扇風機が交互に並ぶ。さらに3700形と同じ機器のVVVFインバータ制御が鳴り響くという、ギャップが面白い。現代のVVVFインバータ制御は一段と進化し、走行音がさらに低減されたことから、「昔ながら」という言葉が重なり合う。

地下を抜けると、空は曇天。いつ雨が降ってもおかしくない状況だ。幸い東京都内では持ちこたえている。京成高砂で運転停車したのち、発車すると、3600形にとっては久々の“特急運転”となり、威勢よく飛ばす。この日は急行灯も点灯しており、沿線や駅で撮影した方にとっては、“いい画(え)”になったことだろう。

千葉県に入ると天気予報通りの展開となる。

京成津田沼を通過すると、京成ツアーおなじみの抽選会が各車両で行なわれる。乗客は1両につき約12人乗車しており、ロングシートをゆったり過ごす。この日に限り、着座幅を広くとってよいので、贅沢な雰囲気に包まれていた。

抽選会は各車両3人が当選し、山万ユーカリが丘線の車両基地でスカイライナーBOXのお菓子詰め合わせセットがプレゼントされる。

ユーカリが丘に到着

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不惑を迎えたユーカリが丘に到着した不惑の3600形。
京成上野を発車して43分後の9時50分、ユーカリが丘3番線に到着。参加者、スタッフなど全員の降車を確認すると、わずか1分後に発車してゆく。ここではトイレ休憩と化す。

京成電鉄のユーカリが丘駅は1982年11月1日(月曜日)に開業。当初は相対式ホーム2面2線ながら、上下線ホームとも向かい側に線路が増設可能な構造としていた。その後、上り線ホームに線路を増設し、1996年7月20日(土曜日・海の日)のダイヤ改正から使用を開始。現在は朝ラッシュ時に一部の各駅停車が快速特急に道を譲る。

ちなみに、この地は以前、志津駅の候補地だったという。志津駅はユーカリが丘駅の手前に建設されることになり、1928年3月18日(日曜日)に開業。結果的に志津駅の候補地が両方とも“採用”されたことになる。

ユーカリが丘線に乗り換え

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1000形こあら号は新交通システムの現役最古参車両。
ユーカリが丘線の改札を通り、ホームにあがると、先ほどまで強く降っていたように思えた雨がやんだ。

10時08分、ユーカリが丘線のホームに1000形こあら1号の団体列車が入線。車体の長さは先頭車8,850ミリ、中間車8,000ミリ、車体の幅は2,500ミリ、車体の高さは3,300ミリ。3両合計の自重が29.7トンで、普通鉄道の電車1両分に相当する。乗車すると、車内空間が小さく、手を高々とあげたら天井につくほど。

ユーカリが丘線は、ユーカリが丘を起点に地区センター、公園、女子大、中学校、井野を経て、公園に戻る4.1キロの路線で、列車はラケット状の反時計回りでユーカリが丘―ユーカリが丘間を循環運転する。このため、全線単線で行き違い対応駅は公園のみ。ポイント(分岐器)も行き違い用に設けた公園、車両基地の入出庫用に設けた女子大、車両基地内の3か所にしぼった。

全区間の所要時間は14分で、ユーカリが丘駅で1日乗車券(大人500円、子供250円)を買わない限り、循環乗車はできない。運賃は大人200円、子供100円の均一料金である。

山万は1951年2月20日(火曜日)に設立。当初は繊維卸売業を営み、1965年3月より宅地開発事業(不動産)も手掛ける。1971年5月から佐倉市志津地区にて、ユーカリが丘ニュータウンの開発(総開発面積245ヘクタール)に着手すると、“自前の鉄道”を建設するという、世界でも前例のない取り組みに打って出る。日本のみならず、世界中からも注目を集めたという。

しかも、“自前の鉄道”は京成電鉄などの「普通鉄道」ではなく、当時ひとつも開業していない新交通システムを採用。山万は中央案内軌条式を選択した(詳細はコラム①参照)。

1978年12月28日(木曜日)、運輸省(現・国土交通省)より地方鉄道としての免許を取得し、晴れて鉄道事業に新規参入。1979年4月よりユーカリが丘ニュータウンの分譲を開始すると、12月22日(土曜日)にユーカリが丘―中学校間を第1期工事、1981年6月に中学校―公園間を第2期工事として、ユーカリが丘線の建設を進めた。運営、運行にあたっては、国鉄OBが入社することで、長年の経験と技術を注入し、次世代の鉄道員(ぽっぽや)に託すことにした。

1981年に相次いで開業した神戸新交通ポートライナー、大阪市交通局(現・大阪市高速電気軌道)ニュートラムに次ぐ、3番目の新交通システムとして、1982年11月2日(火曜日)にユーカリが丘―中学校間が開業。ユーカリが丘と公園を除き、新交通システム初の無人駅になったほか、全駅ともホームドアの設置が見送られた。

当時は単純な折り返し運転だったが、1983年9月22日(木曜日)に中学校―公園間が開業して全通すると、前述の循環運転がスタートした。各駅はユーカリが丘ニュータウン内のすべての住居から徒歩10分以内でアクセスできるように配慮されており、利便性を重視した。

開業時から活躍が続く1000形は1980年12月に登場。いわば“松坂世代の鉄道車両”である。当時、車両愛称はなかったが、ユーカリが丘線開業10周年を迎えた1992年に公募を行ない、ユーカリが丘線にちなんだ「こあら」が圧倒的に多く、「こあら号」と命名された。

車体は軽量化に優れ、腐食に強いアルミ。カラーリングはアイボリーホワイトをベースに、自然を表現したグリーンのストライプをアクセントカラーとした。当初から1編成3両で、定員は205人。混雑時は最大322人まで乗車できるという。

生放送

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1000形こあら1号の車内。
団体列車は10時10分に発車すると、早々に車内放送が流れる。

「いつもは自動での放送が流れておりますが、各駅の御案内とともに、生放送にて……」

先頭車には運転士とアナウンス役が乗務しており、後者が道先案内人となる。鉄道の車内放送で「生放送」という言葉を耳にしたのは初めてだ。自動放送は「収録」なので、乗務員などの肉声放送は確かに「生放送」である。

公園では、定期列車(1000形こあら3号)の到着を見届けてから発車。

「公園駅を出ると、ユーカリが丘線は“ワッカ”の部分に入ります。左側には、のどかな田園風景が広がってまいります」

と案内人が解説する。

ワッカ部分の最初の駅となる女子大は、駅前に和洋女子大学の敷地があることが由来。しかし、開業当初から校舎がなく、グラウンドと管理室が広がっていたという。1997年5月に和洋女子大学の佐倉セミナーハウスが竣工し、研修棟、宿泊棟などを構えている。

女子大を発車すると、進行方向右側には車両基地が広がる。検修庫には1000形こあら2号が留置されている。敷地内には中型と小型の路線バス車両が各2台留置されており、のちにあることを知る。

トンネル内でイルミネーション

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暗い空間を明るく、楽しく。
中学校は井野中学校の最寄り駅。発車すると、ユーカリが丘線は台地の下を通るため、新交通システム初のトンネル(全長222メートル)に入る。進行方向右側には山万社員の手作りイルミネーションが輝き、特別に停車。しばし光を眺める。いただいた資料によると、通常はクリスマスシーズンの前後に実施しているという。

警笛がトンネル内に鳴り響き、発車すると、トンネルを抜け井野を通過。急カーブと35パーミルの急勾配を登り、再び公園へ。ワッカの部分が終了する。ここでは定期列車行き違いのため、しばらく停車。双方ともほぼ同時に発車した。

10時29分、ユーカリが丘に戻ると、1分後の10時30分に折り返す。10時35分、再び女子大に到着すると、無線で輸送指令に入庫の手配を連絡する。しかもツアー参加者には“生放送”というサービス。緊張が客室に響く。

ポイントの切り替えを終え、10時36分に発車すると車両基地に入り、10時38分、洗浄線に到着。洗車機はなく、すべて手作業で行なう。進行方向左側の畑では、ツアー客を出迎えるかの如く、キジが羽根を休めていた。

ツアー客は3班に分かれ、10時45分から11時45分まで「運転台で発車ベル・ドアの開閉操作」「運転台で写真撮影」「検修庫内で床下等の構造説明」を見学する。参加メディアも2班に分かれて取材しており、この記事では案内された順に御紹介しよう。

運転台で写真撮影

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1000形こあら号の運転台。
1000形こあら号の運転台は進行方向の右側に設置。ハンドルは力行とブレーキが一体化された右手操作のワンハンドルマスコンである。最高速度は50km/h。

運転席の後ろには、家庭用のエアコンを設置(室外機は床下に設置)。意外なことに1000形こあら号は、当初から車両冷房が搭載されていない非冷房車なのだ。

乗務員室にエアコンを設置したのは乗務中の熱中症を防ぐためなのだろう。また、ささやかながら冷風を客室に流すためなのか、乗務員室と客室の仕切りドアの下部が空いている。

客室も紹介すると、座席はロングシート。シートモケットは2012年の開業30周年を機に、こあら1号がブルー、こあら2号がレッド、こあら3号がグリーンに色分けし、優先席のみカラーが異なる。また、車体断面が狭いことから、室内灯はすべてグローブつきとしており、破損防止を図ったものと思われる。

側窓の上は開閉可能な内折式、下は固定式で横引式のカーテンを設けた。このため、背もたれと下の側窓には空間があり、カーテンが引きやすいよう配慮されている。

天井にはラインフローファンがあり、送風が流れる。また、通風器もあり、外気を直接取り込むことができる。

検修庫内で床下等の構造説明

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披露された抵抗制御。
検修庫に移動すると、前述した1000形こあら2号が留置されている。通常はカバーで覆われている床下機器などが披露された。

台車は両側の走行路を支える空気入りゴムタイヤ、中央案内軌条を支える案内輪は充填式のゴムタイヤを挟み込む形で装備され、万全を期している。

列車の駆動力を作る制御装置は中間車に搭載され、意外なことに抵抗制御(排熱量が多い旧式のタイプ)である。また、運転士乗務のワンマン運転なので、保安装置はATS(Automatic Train Stop device:自動列車停止装置)なのも意外。新交通システムでは唯一無二の“アナログ車両”なのだ。インフラ部の公的補助を受けずにユーカリが丘線の建設を進めたことで、車両を含めた全体のコストを徹底的に削減したようである。

車両の冷房化について検修員にお伺いしたところ、検討したことがあるという。ひとつの案として、物流倉庫などで使われているスポットクーラーの車内搭載を試みたが、床下に搭載された電動発電機(「MG」とも呼ばれる補助電源装置)の発電容量が不足することから断念。ちなみに電動発電機から静止形インバータ(「SIV」とも呼ばれる半導体とマイコンを使った補助電源装置)への更新については、検討したことがないそうだ。

このほか14分の循環運転なので、乗車時間が短い、駅間の走行時間も短く乗降用ドアの開閉が頻繁に行なわれることから、冷房効果がないと判断し、現在に至る。“涼”については、ユーカリが丘駅に冷房つき待合室を備えているほか、2018年夏から車内もしくはユーカリが丘駅で、クーラーボックスに冷たいおしぼりを入れるサービスを開始。2021年夏にはうちわのサービスも追加し、車内の熱中症対策に力を入れている。

メンテナンスについては、開業当初から通常検査、3か月に1回の月検査は検修庫で実施、4年に1回の定期検査は京王重機に依頼しているという。

なお、新型車両の導入については、新交通システム唯一の中央案内軌条式という特殊性が影響し、設計費だけでも莫大な価格になるらしい。厳しい状況ではあるが、1000形こあら号の末永い活躍に期待したい。

運転台で発車ベル・ドアの開閉操作

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「車掌スイッチ」と呼ばれる乗降用ドアの開閉機能は頭上にあり、コンパクトにまとめた。
1000形こあら1号に戻り、運転台で発車ベル(乗降促進ブザー)と乗降用ドアの開閉操作を行なう。事故防止のため、1101号車以外の車両は乗降用ドアを締め切った。

乗降用ドアの開閉ボタン及び発車ベルは、乗務員室ドアの上に配置している。少し身を乗り出し、側灯が点灯していないことを確認後、「戸開」のボタンを押すと、乗降用ドアが開くとともに、側灯が赤く光る。

乗降用ドアを閉める際は、黄色の「合図」ボタンを押したあと、「戸閉」ボタンを押す。乗務員によると、基本的に目視して操作を行なうという。車体のフロントガラスの横にサイドミラーが設置され、到着前、発車前後のホームの安全確認用としている。

出庫点検見学

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床下機器の確認を実演する運転士。
班分けによる見学行程を終えたあと、洗浄線にて出庫点検見学が行なわれる。車両基地イベントで、自動車でいう「運行前点検」を行なうのはレアなケースである。

点検内容は乗務員室内の確認、前部標識灯(前照灯)の点灯と消灯の確認、床下機器の確認、乗降用ドアの開閉確認、走行確認(動かしたあと、ワンハンドルマスコンを離し、5秒後に自動で非常ブレーキが動作かかるのかを確認する)など。なお、一部は割愛した。

山万鉄道事業部が路線バスに進出

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こあらバス。
見学終了後は12時30分までフリータイムとなり、バス車両が中型、小型各1台の車内や運転席が公開された。

バス車両の車体を見ると、「山万ユーカリが丘線列車補完等路線バス」と明記されている。山万は2020年11月7日(土曜日)より、こあらバス(山万コミュニティバス)の運行を開始。ユーカリが丘駅北口発着の1~3系統、ユーカリが丘駅南口発着の101~103系統(すべて循環路線)で、ユーカリが丘線を補完している。

先述したとおり、ユーカリが丘線はユーカリが丘ニュータウン内の住居から駅まで10分以内であることをセールスポイントにしていた。しかし、分譲開始から約40年たち、住民の高齢化が進み、居住地から駅まで時間がかかる人が多くなった。

そこで、こあらバスを運行することで、ユーカリが丘線の補完、ユーカリが丘ニュータウン内の交通網を充実させ、利便性の向上を図ったのだ。バス車両は中型の「こあら4~7号」、小型の「こあら8~10号」(計7台)が用意された。乗務員(運転士)はバス専任、鉄道とバスの兼任が務める。

運賃はユーカリが丘線と同じ(前払い式、交通系ICカードが使えない)。車内は冷房が標準搭載されているので、夏季の快適性はユーカリが丘線より上である。

兼任運転士によると、電車の場合、安全装置が多重に備えており、事故が食い止められるようにしているのに対し、バスは運転士の注意力だけが頼りだという。

「あと、お客様の命を預かっていることに変わりありませんので、事故がないように気をつけています」

どの公共交通機関も乗客の命と財産を守る使命が変わらないので、いつも気を引き締めて乗務に就く。

なお、2021年12月9日(木曜日)に発生した車両故障、2022年4月13~19日(水~火曜日)に発生したポイント故障、2021年12月14~16日(火~木曜日)の変電所更新に伴う運休時には、列車代行バスとして運行された。こあらバスは、「通常の路線バス」と「列車代行バス」の2つの役割があるといってよい。

ツアーは12時30分で終了。参加者の多くは新発見、再発見で、濃密な時間を過ごしたのではないだろうか。

コラム①中央案内軌条式の新交通システム

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中央案内軌条式の軌道。
山万はユーカリが丘線の新交通システム導入を決めた際、日本車輌製造(通称、日本車両)と三井物産が共同開発した中央案内軌条式のVONA(ボーナー)(Venicles Ot New Age:新時代ののりもの)を採用した(無人運転車両ではないため、厳密には「VONA-one」と称す)。

このシステムは1972年に世界初の無人自動運転の新交通システムとして谷津遊園に納入されたのが始まり。ただし、遊園地のアトラクション扱いで、“正規の鉄道”としては山万が初である。

VONAの車両を走行させるには、左右に走行路、中央にI形鋼の案内軌条を設置。案内軌条には一般的な電車の架線に相当する「アルサス剛体第3軌条式」を敷設することで、直流750ボルトの高圧電流が流れる。1000形こあら号はそれを集電することで走行する。この方式は愛知県の桃花台新交通も採用し、1991年3月25日(月曜日)に開業したが、2006年10月1日(日曜日)付で廃止。現在では山万が唯一である。

VONAが普及しなかったのは、1983年3月に運輸省と建設省(いずれも現在の国土交通省)が「新交通システムの標準化と基本仕様」を定めたこと。以降に建設申請(既設線の延伸は除く)されたものは、すべて「側方案内方式」に統一された。

コラム②昭和の薫りが漂うユーカリが丘線

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ユーカリが丘駅で実証実験中の顔認証改札システム。
現在もユーカリが丘線の券売機は昔ながらのボタン式で2000円札以上の紙幣とプリペイドカード(交通系ICカードも含む)が使えない、自動改札機は“絶滅危惧種”といえるバーのあるタイプである。

2021年9月15日(水曜日)から1か所だけ使用休止し、ポール型の顔認証改札システムを設置。実証実験が前述の「こあらバス」も含め実施されており、実用化すれば自動改札機の更新が考えられる。

トータルコストを抑えた背景として考えられるのは、先に開業した新交通システムの路線とは異なり、インフラ部の公的補助を受けなかったこと。自前で開発したニュータウンゆえ、可能な限りハイテクを避けて工費の節減に努めたのだろう。

別の見方をすれば、ユーカリが丘線は“昭和の薫り”がまだまだ楽しめる鉄道だ。鉄道に興味のない方でも、なつかしさが漂うのではないだろうか。

【取材協力:京成電鉄、京成トラベルサービス、山万】
以上は 2 年前に書かれた内容です
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