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新京成サンクスフェスタ 2022 in くぬぎ山

  2022/10/11
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例年秋季は鉄道の車両基地でイベントを開催することが多い。しかし、新型コロナウイルスの影響で、2020・2021年は開催を見送るところが多かった。

新京成電鉄もそのひとつで、2022年10月8日(土曜日)、くぬぎ山車両基地で「新京成サンクスフェスタ 2022 in くぬぎ山」を3年ぶりに開催。感染防止策を施しての開催ながら、参加者は3連休初日のひとときを楽しんだ。

新京成サンクスフェスタの歴史

新京成サンクスフェスタは、1994年10月16日(日曜日)から始まった車両基地イベントである。参考までに同年より、10月14日は「鉄道記念日」から「鉄道の日」に変わり、東京の日比谷公園では鉄道フェスティバルが毎年10月上旬頃の土・日曜日に開催された(2020・2021年は開催中止)。

鉄道の日とともにスタートした新京成サンクスフェスタは、“10月の風物詩”(ただし、台風などで開催が延期されたことがある)として定着し、毎年約5000人が来場。家族連れやレールファンに親しまれている。

冒頭で述べたとおり、新型コロナウイルスの影響で2020・2021年は中止を余儀なくされた。2022年に再開する際、販売は飲料のみ、入場時間を5回に区切っての完全予約制とし、各回500人(1組5人まで)、計2500人の当選者のみ入場できる。今回は約10000人が応募し、当選者のみ9月21日(水曜日)にメールを送信。これが入場券の役割も兼ねる。

新京成電鉄によると、5回目の入場者は“男性おひとりさま”が多いという。おそらく、そのほとんどがレールファンで、鉄道フェスティバルのあとに駆けつけるのだろう。

8800形ふなっしートレインの展示

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検修場は6両編成の車両が完全に収まる。
くぬぎ山駅と隣接する新京成電鉄の本社は鎌ヶ谷市所在に対し、くぬぎ山車両基地は鎌ヶ谷市と松戸市にまたがっている。車両基地が2つの市町村にまたがるのは、東武鉄道の南栗橋車両管区春日部支所、東急電鉄の長津田検車区もあるので珍しいことではない。

ただ、上記2つと異なり、出入口が鎌ヶ谷市1か所、松戸市2か所の計3か所に設置されているのは特筆に値する。日本の車両基地では稀有な存在であろう。ちなみに毎年12月の新年ヘッドマーク電車お披露目は鎌ヶ谷市、新京成サンクスフェスタと2019年の80000形報道公開は松戸市で開催されている。

松戸市側の出入口で受付を済ませると、検修場へ。感染防止対策の一環として、大型の扇風機をいたるところに配置することで、換気を強化している。

ここには8800形ふなっしートレインが展示。松戸方の6号車は「電車正面の記念撮影」で、家族写真、電車のみ、どちらも撮影可能だ。左隣は「なりきり駅長撮影会」で、制服と制帽を着用した幼児が80000形もしくはN800形を背景に記念撮影する。

一方、京成津田沼方の1号車は、事前アトラクション応募当選者対象の「運転席での記念撮影」で、おもに家族連れが乗務員室に入り、親御さんやスタッフが撮影する。制帽も用意されており、運転士気分を味わえる。ちなみに1号車側でも電車正面の記念撮影が可能である。

撮影が終了すると、スタッフが消毒作業をして、次の参加者を迎える。今回は一部のアトラクションで消毒作業が徹底されていた。

京成グループが掲げるBMK

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京成グループの取り組みを入場者に知らせるパネル。
8800形ふなっしートレインの向かい側は、「京成グループBMKコーナー」で、京成グループ(128社、従業員数約24000人)の取り組みをパネルと映像で紹介している。

BMKというのは「ベストマナー向上」の略で、1999年に制定。分科会などで日頃のサービスに対する情報交換を積極的に行ない、士気を高めているという。特に顕著な成果をあげた社員には、京成電鉄の社長(BMK推進運動委員会の委員長を兼務)から表彰状が贈られる。

踏切を体験する

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展示された踏切。
新京成電鉄には踏切が71か所存在することから、体験コーナーが設けられた。

まず「踏切遮断機の展示」。ボタンを押すと、警報音が鳴動し、遮断機が下りる。その後、線路上で閉まったことを示す信号が点灯し、運転士に知らせる。これについては多くの私鉄で見られる。

次は「踏切脱出体験」で、踏切を渡ろうとしたら遮断機が下りてしまい、閉じ込められた場合に行なうもの。踏切で歩行者が待っていたら、助け舟を出してくれると思うが、誰もいない場合は自力で脱出するしかない。

スタッフの説明によると、踏切の端を押して脱出することで、体の負担が低減されるという。特にくぐり抜けた場合、立ち上がるのに大変だとか。

最後は「踏切支障報知装置の体験」で、踏切内で自動車等が立往生した場合、非常ボタンを押すと、線路上では特殊信号が発光し、運転士に異常を知らせる。

Nゲージ鉄道模型運転会

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街、山、川とバラエティーに富んだジオラマ。
車両基地イベントでは、定番ともいえる鉄道模型Nゲージの展示。ここでは左側に運転操作の希望者、右側に“「観覧スペース」という名の立見席”を設けた。

運転操作は1回につき6人が操作。車両は新京成電鉄N800形の旧カラーと現行カラー、首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス線)TX-2000系、JR東日本常磐線用のE657系とE531系、東武鉄道100系日光詣スペーシアの計6編成が用意され、“夢の球宴(オールスター)”と化した。

ドア装置展示

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車掌気分を味わえるドア装置体験。
8800形をモデルとした乗降用ドアのモデルが展示された。新京成電鉄によると、実際にテレビ番組のロケで使われたことがあるという。

裏側には車掌スイッチという乗降用ドアの開閉操作するもの、再開閉スイッチ、運転士に発車を知らせるブザーを配置。また、「側灯」もあり、乗降用ドアが開くと赤いランプが灯(とも)る。

さらにはドアエンジンがむき出しの状態となっており、乗降用ドアのメカニズムも披露された。

カットモデルの保存車両①800形

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新京成電鉄の象徴といえる「8」は800形から始まった。
記念撮影コーナーとして、カットモデルとして静態保存された800形807号車、8000形8501号車が展示された。いずれも乗務員室に入ることができる。

新京成電鉄は1947年12月27日(土曜日)に開業の際、京成電鉄からの移籍車両で賄われたが、ようやく自社でオリジナル車両を設計できる段階となり、その第1号が800形となった。

1971年3月30日(火曜日)にデビュー。乗降用ドアは片開き式で、1975年12月まで36両が投入された。当初は4両編成と6両編成の2種類で、非冷房だったが、のちに冷房改造、6両編成と8両編成の組み替えが行なわれた。

1996年4月1日(月曜日)のダイヤ改正で、新京成線の最高速度を75km/hから85km/hに引き上げる際、編成中の電動車の数を増やす必要が生じ、6両編成は3M3T(Mは電動車、Tはモーターがない付随車)から4M2T、8両編成は4M4Tから5M3Tに組み直した。これに伴い中間車8両が廃車、先頭車2両が中間車化改造を受けた。

2005年5月29日(日曜日)にN800形がデビューすると廃車が進み、2010年7月25日(日曜日)のさよならイベントをもって引退。7月31日(土曜日)付で全廃された。

なお、カットモデルの807号車は2007年1月15日(月曜日)付で廃車。今回のイベントでは「800形電車記念撮影」と称され、3年ぶりに雄姿を公開した。

カットモデルの保存車両②8000形

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8000形のカットモデルは登場時のカラーリングで静態保存。
8000形は新京成電鉄初の電気ブレーキ、両開き式の乗降用ドア、冷房装置を初採用した車両で、1978年11月1日(水曜日)にデビュー。1981年の増備車から制御装置は抵抗制御から、界磁チョッパ制御(旧式の省エネ車両)に変わり、併せて発電した電気を架線に戻す回生ブレーキが採り入れられた。1985年まで54両が投入され、「くぬぎ山の狸」として親しまれてゆく。

2008年から2年にわたり、界磁チョッパ制御の一部編成を対象に、VVVFインバータ制御(現行の省エネ車両)への換装を実施。しかし、N800形の増備に伴い、2011年2月28日(月曜日)から廃車が始まった。その後、80000形の登場もあり、2021年11月1日(月曜日)に引退、11月2日(火曜日)付で全廃された。

なお、カットモデルの8501号車(抵抗制御車)は2012年2月に廃車。今回のイベントでは、側面に貼付された公式キャラクターにちなみ、「しんちゃん電車記念撮影」と銘打った。

いずれのカットモデルは、屋内、屋外のどちらにも展示できるよう、四隅にキャスターを取りつけており、移動を容易にしている。

重ね捺(お)しスタンプラリー

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押印に失敗しないスタンプラリー。
検修場内には3か所に「重ね捺しスタンプラリー」を設置。事前に用意された台紙を器具に差し込んだあとに押印する。台紙はハガキサイズで、63円切手を貼れば、絵葉書にもなる。

モーターカーと車両撮影会

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保守作業用のモーターカーと現役車両そろい踏みの車両撮影会。
検修場を出ると、事前アトラクション応募当選者対象の「モーターカー体験乗車」で、保守用の車両に乗車できる。折り返し地点から先は「全車種ラインナップ撮影会場」で、現役の4車種が展示された。

右から主力かつ現役最古参の8800形(方向幕は「高根公団」)、8900形(デジタル方向幕は「鎌ヶ谷大仏」)、N800形(デジタル方向幕は「くぬぎ山」)、80000形(デジタル方向幕は新京成電鉄のロゴ)で、キャリア順に配置。ちなみに、8800形、8900形、80000形はトップナンバー(第1編成)に対し、N800形はラストナンバー(第5編成)という、極端な組み合わせである。

さらに、くぬぎ山車両基地の奥には北総鉄道&京成電鉄成田空港線の高架があり、参加者の一部は新京成電鉄の現役全車種と成田空港線を走行する〈スカイライナー〉のツーショット撮影を楽しんでいた。

車両撮影のウラガワ

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防護ネットでヤジウマの撮影を阻止。
くぬぎ山車両基地は幅員が狭い道路沿いにあり、金網越しから容易に撮影できる。ただ、イベントになると、落選したヤジウマが撮影しようと押し寄せることが考えられる。これでは自動車の通行の妨げとなってしまい、トラブルの発生につながってしまう。また、撮影会場で撮影する際、ヤジウマの顔やカメラが写ると、“いい画(え)”にならない。

新京成電鉄は自動車や近隣住民等に配慮したようで、金網に防護ネットをかけて、“撮影は御遠慮ください”を暗に示した。イベント開催のウラには、敷地外での安全確保にも心血を注いでいる。

ミニ電車とモザイクアート

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子供向けのミニ電車と力作のモザイクアート。
最後は退場口付近のアトラクションを御紹介しよう。

まずは「ミニ電車」で、8900形3両編成で運転。運転台は1両目の後方にあり、運転士は2両目でハンドルを握る。乗客は2・3両目に乗り、1周運転をする。

見応えがあるのは「8000形モザイクアート」で、様々な写真を組み入れて、8800形3編成分が描かれている。

3年ぶり開催の「新京成サンクスフェスタ 2022 in くぬぎ山」は、入場時間を5回に区切ったことで、ゆとりをもって行動できた参加者が多かったのではないだろうか。

【取材協力:新京成電鉄】
岸田法眼の鉄道チャンネル
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『Yahoo! セカンドライフ』(ヤフー刊)の選抜サポーターに抜擢され、2007年にライターデビュー。以降はフリーのレイルウェイ・ライターとして鉄...
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